次のような遺言があるとします。
①自宅は長男である甲に相続させる。
②私が死亡する以前に甲が死亡(同時死亡を含む)したときは、上記自宅を甲の長男であるAに相続させる。
この遺言の中で②の部分が「予備的遺言」と呼ばれるものです。
財産を受け取ってもらいたい甲が、遺言者より先か又は遺言者と同時に死亡することも考えて、そのような場合に本命である甲の代わりに当該財産を分け与えたい者を指名し、遺言が空振りになるのを防ぐのが予備的遺言です。
判例上も、遺言者が死亡した時点で甲が既に死亡している場合、甲に相続させ又は遺贈するとしていた財産は、甲の相続人(例えば子)に承継させるという遺言者の特段の意思が、遺言書の記載から認められない限り、当然には甲の子に受け継がれるものではないと判断しています。
すなわち、予備的遺言までしておかないと遺言が空振りに終わり、甲が相続することになっていた財産は、一般原則に戻って相続財産の一部に取り込まれてしまいます。
したがって、甲に弟である乙がいた場合、自宅については、乙とAが法定相続分に従って相続することなります。
予備的遺言をお忘れなく。