被代襲者が、その生前に被相続人から贈与を受け、その後に死亡した場合、この贈与は代襲相続人に対する特別受益となるでしょうか。
事例としては以下のような場合です。
A(被相続人)には、妻Wと長男B、二男C、長女Dがいた。 Bは、Aが死亡する1年前に死亡していたが、生前、Aから事業資金として1000万円の贈与を受けていた。 その後にAが死亡した。Bには子Xがいる(したがって、Xが相続人となる)。 Bの代襲相続人(子)であるXは、Bの持ち戻し義務を引き継ぐでしょうか(Bに対する生前贈与がXに対する特別受益となるでしょうか)。
この場合、代襲相続人であるXは、被代襲者Bの持ち戻し義務を引き継ぐ(Xに対する特別受益となる)と考えられています。
その理由は、代襲者であるXは、被代襲者であるBの地位を引き継ぐ、言い換えれば、Xとしては、Bが生存していたならば置かれていたであろう地位よりも、有利な地位に置かれるべきではないということです。
ただ、例外として、BがAから高等教育(大学等)の費用や外国留学の費用を得ていた場合などは、高等教育や海外留学などによる利益は、Bが一身専属的に受けているのであって、Xがそういう高い学歴等をAからもらったわけではないので、Xがこのような受益を持ち戻す必要ないとした審判例があります(鹿児島家裁昭和44年6月25日審判、徳島家裁昭和52年3月14日審判)。