1、相続人を確定させる
①相続人調査
故人の戸籍を出生に遡って調査し、相続人のなるべき者を調べます。
相続人の中に調査を尽くしても行方が分からない者(不在者)がいる場合には、家庭裁判所に不在者の財産管理人の選任を求めることがあります。また、不在者が7年以上生死不明の場合には、失踪宣告の申立も検討します。
その他、必要があれば、相続放棄の有無や相続欠格・推定相続人廃除の有無を検討します。
②遺産分割協議の当事者の確定
相続人に中に未成年者がいる場合は、その親権者が遺産分割協議に参加します。
ただし、親権者自身も共同相続人である場合には、親権者の行為は利益相反行為となるため、家庭裁判所に対し、特別代理人の選任を求める必要があります。
また、相続人の中に認知症、精神障がい等により判断能力を欠く常況にあるのに後見開始の審判を受けていない者がいる場合には、その者について、家庭裁判所に対し、後見開始の審判を申し立てて、成年後見人を選任してもらう必要があります。
ただし、すでに成年後見人が選任されていて、成年後見人自身も共同相続人である場合には、未成年者の場合と同様、特別代理人の選任を求める必要があります。
2、遺産の範囲を確定させる
通常はあまり問題になりませんが、例えば、ある不動産について、登記簿上は相続人のうちの1人の所有名義となっているが、実質上は故人(被相続人)所有の不動産であるとの主張が、相続人の1人からなされることがあります。このような場合には、当該不動産が遺産に含まれるのかを確定する必要があります。
3、相続分を算定する
①特別受益の算定
相続人の一部に故人から生前贈与や遺贈を受けている者がいる場合には(特別受益)、現に存在する遺産のみを対象として遺産分割したのでは、公平を欠くことになります。そこで、生前贈与や遺贈は相続分の前渡しと考えて、計算上相続財産に加算して(持戻し)、みなし相続財産として遺産分割の際に考慮します。
②寄与分の算定
共同相続人のうち、故人の生活の世話や病気の看護をしたり、無償で家業を手伝ったりして、故人の財産の維持又は増加に貢献(寄与)した場合、その相続の寄与が特別と認められるときは、遺産分割をする際に遺産総額から寄与分を予め控除し、寄与した相続人にはその寄与分を本来の相続分とは別枠で増額して相続できるとされています。
4、遺産分割協議
以上を踏まえて、共同相続人全員で遺産分割協議を行います。
相続人の中に未成年者や被成年後見人がいる場合には、家庭裁判所に特別代理人の選任を求める必要があります。
5、調停・審判の申立
相続人間で遺産分割の協議がまとまらないときは、家庭裁判所に対して、遺産分割の調停・審判を申し立てることになります。
「調停」とは、家庭裁判所における話し合いによる解決方法であり、「審判」とは話し合いによる解決ができない場合に、裁判所の判断(審判)によって解決する方法です。
手続上は、調停を経ずに最初から審判を申し立てることができますが、家庭裁判所では事件の受理に当たって、まず調停事件として申し立てるように指導することが多いですし、実務上も、ほとんどケースでまずは調停が実施されます。
調停で、話し合いによる合意に至った場合には、調停成立となり、調停調書が作成されます。
合意に至らなかった場合は、調停不成立となり、審判へと移行します。審判では、審判官(裁判官)が当事者の言い分や客観的な資料に基づいて、適切と考えられる判断(審判)をします。